有効求人倍率とは?
有効求人倍率とは、求職者1人に対して企業からの求人がどれくらいあるかを示す経済指標のことです。
1人あたりの求人数はどのくらいかが分かる
有効求人倍率により、求職者1人あたりの求人数がどのくらいあるかが分かります。基準は「1」で、1より大きいか小さいかによって、企業からの需要がどのくらいあるかが分かります。
厚生労働省が発表する経済指標の1つ
有効求人倍率は、厚生労働省が発表する経済指標の1つで、毎月発表されています。厚生労働省は、有効求人倍率をハローワークに登録している求職者に基づいて算出しています。ハローワークでは有効期間を2か月間と定めていますから、有効求人倍率で扱う求人は有効期間以内の求人となります。
有効求人倍率を知るための用語
有効求人倍率を理解するためには、いくつかの用語を知る必要があります。それぞれ解説します。
有効求人数
有効求人数は、前月から繰越された有効求人数と当月の新規求人数の合計数ことです。
有効求職者数
有効求職者数は、ハローワークにおける当月の新規求職申込者数と前月から繰り越された求職者数の合計のことです。
有効求人倍率の計算式
有効求人数と有効求職者数の定義を学習したところで、有効求人倍率の計算式を確認してみましょう。有効求人倍率の計算は、有効求人倍率=有効求人数/有効求職者数です。例えば、有効求人数が80社、有効求職者数が200人とすると、有効求人倍率は0.4となります。
有効求人倍率の推移
有効求人倍率がどう推移してきたのか、データを元に確認していきます。
リーマンショックにより大きく下落
有効求人倍率の推移をデータによって見ていきましょう。1990年のバブル経済期の有効求人倍率は1.43と高い数字にありました。しかし徐々に下降線を辿り始め、1992年には1を割り込むようになりました。有効求人倍率が1未満となると求職者が働きたいと思っても、求人が限られていますから容易に働けないことになります。ここから有効求人倍率は大きく落ち込み、2000年前後には0.49まで下がりました。
2000年前半にようやく有効求人倍率が上がり始め、2006年頃には1.06と大きく上昇。しかし2009年にはリーマンショックの影響で有効求人倍率が0.45まで大きく下落してしまいました。バブル経済崩壊と、リーマンショックという2つの不況により有効求人倍率の大幅な下落が見てとれますね。
2010年以降は右肩上がりに
2010年代に入ると有効求人倍率は右肩上がりで上昇し始め、2018年には1.61まで上がりました。翌2019年には1.60まで下がったものの依然として高い数値ですよね。この数値は、バブル経済期の有効求人倍率は1.43をも上回る数字です。有効求人倍率は、リーマンショックやバブル崩壊等、マクロ経済にインパクトを与える出来事が起こると大きく下落していることが分かります。有効求人倍率が経済指標と言えるゆえんですね。
2019年度【都道府県別】有効求人倍率
2019年度の都道府県別・有効求人倍率はどのようになっているか確認していきたいと思います。まず、東京都の有効求人倍率は2.12と高水準でした。この数値と並ぶ県は福井県しかありません。大阪府の1.78、愛知県の1.96、岐阜県の2.04、岡山県の2.00等も高い倍率でした。2019年の有効求人倍率は1.60なので平均を上回っています。最下位は神奈川県で、1.20の倍率に留まりました。
2019年度【職種別】有効求人倍率
職種別でも有効求人倍率は違います。2019年度職種別・有効求人倍率を確認します。有効求人倍率が最も高いのは建築・土木・測量技術者で6.82。次に介護サービスの3.61が続いています。建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は何を表しているかというと、100人の求職者に対して求人件数が682あるということです。
有効求人倍率を見る時の4つのポイント
有効求人倍率を見る時には、注意しなくてはならない4つのポイントがあります。
非正規社員も含まれている
有効求人倍率の計算式における有効求人数には、正規社員も非正規社員も含まれていることに注意が必要です。ですから有効求人倍率がいくら高くても、非正規社員の求人の割合が高いことがあり得る訳ですね。有効求人倍率が経済指標であるといっても、有効求人倍率の非正規社員の求人割合についても確認しておかなくては、有効求人倍率を用いて日本経済の状況を把握できたことにはなりません。
実は就職サイトが含まれない
有効求人倍率は、ハローワークの求人数・求職者数に基づいたデータです。従って、就職サイトが含まれないのです。転職活動をする時に、ハローワークに行くことなく就職サイトだけで最後まで転職活動を行う人もいるでしょう。また、採用活動を行う企業も同じで、ハローワークを利用しない企業もあります。そういった求職者や求人については、有効求人倍率のデータでは考慮されていません。
有効求人倍率に含まれないのは就職サイトだけではありません。求人情報誌や就職エージェントを利用する場合も、有効求人倍率に含まれません。従って、ハローワークにおける求人数・求職者数に基づいたデータだということを考慮せずに有効求人倍率を扱っていると、全体感のある就職のしやすさとは言えないことになります。
売り手市場でも職種によっては有効求人倍率が低い
日本の労働市場は売り手市場と言われています。2019年の有効求人倍率は1.60とバブル経済時期よりも高いことを説明しました。しかし、いくら売り手市場であると言っても、職種によっては有効求人倍率が低いことがあります。例えば、2019年の有効求人倍率のうち、建築・土木・測量技術者:6.82、介護サービス:3.61、接客・給仕:2.96、情報処理・通信技術者:2.65であるのに対し、一般事務は0.38しかありません。
有効求人倍率の高さから、日本は売り手市場なのだから就職しやすいと思って就職活動をしても、一般事務のように有効求人倍率が低い職種ではなかなか内定をもらいにくい事情があるのです。一般事務の倍率の低さからは、求職者数に比して、求人数が少ないことが読み取れます。
大学新卒者の情報がない
厚生労働省が発表している有効求人倍率には、大学新卒者の情報がありません。従って、有効求人倍率だけを見ていても新卒の就職のしやすさまでは分かりません。中途採用市場における有効求人倍率の数値を見て、推測することくらいしかできません。ただし、リクルートワークス研究所という民間のシンクタンクが大学新卒者の求人倍率を発表しています。行政の発表ではありませんが、有効求人倍率から大学新卒者の求人倍率を推測するよりは実態に近いと言えるでしょう。
まとめ
有効求人倍率は、求職者1人に対してどれだけの求人件数があるかを示した経済指標を言います。有効求人倍率が高ければ高い程、企業が採用にエネルギーをかけていることになります。求職者の就職しやすさにも影響する指標となります。一方で、有効求人倍率は「非正規社員を含んでいること」「ハローワークの求職者・求人件数」ということになりますから、有効求人倍率だけを見て日本経済の全体を見ることはできません。有効求人倍率については注意して見ていく必要があります。