嘱託とは
嘱託社員は非正規雇用の1つ。正社員との違いや、同じ非正規雇用である契約社員、派遣社員やパートなどとの違いを説明します。
嘱託社員とは?
嘱託社員は非正規雇用の1つです。時々、「会社を定年退職して嘱託になったよ」と言っている人が職場にいますよね。職場を見渡しても嘱託社員は定年退職後に再雇用された社員が多いでしょう。実際、嘱託社員としての働き方は再雇用が多いものの、それだけではありません。
嘱託社員は法律では定められていない非正規雇用です。再雇用後の働き方もあれば、年齢に関わらず非正規雇用の人を嘱託社員という名称で呼んでいることもあります。企業によって嘱託社員としての働き方が違うということは覚えておきましょう。また、嘱託社員は非正規雇用ですから、雇用期間に限りがあります。例えば1年の雇用契約なら、1年ごとに、企業と嘱託社員との間で契約を締結しなければなりません。契約が更新されなければそこで雇用が終わりということもあり得ます。
嘱託社員と正社員の違い
嘱託社員と正社員の違いを確認しておきましょう。正社員は期間の定めのない社員で、定年まで勤務することができます。国内では終身雇用が崩壊したと言われますが、非正規雇用に比べれば、正社員は労働法や会社に守られています。
嘱託社員は非正規雇用ですから、若い年齢で嘱託社員として働いても60歳まで働ける訳ではありません。そもそも嘱託に定年はありません。有期契約を勤務先と結んでいますので、契約が更新されないこともあります。正社員に比べれば雇用は不安定です。また、正社員はフルタイムで働きますが嘱託社員は短時間勤務だったり、非常勤の働き方をする人もいます。
嘱託社員と契約社員・派遣社員の違い
嘱託社員と契約社員そして派遣社員にはどういった違いがあるでしょうか。まず契約社員ですが、こちらは非正規雇用という点では嘱託社員と同じです。ただ、嘱託社員の中に非常勤で働いている人がいるのに比べて、契約社員はフルタイムで働く人が多いという違いがあります。尚、嘱託社員も契約社員も法的な定めはないですね。
次に派遣社員と嘱託社員の違いです。派遣社員も契約社員のように基本的にはフルタイムで働く人が多いです。ただ、嘱託社員と派遣社員の大きな違いは雇用主にあります。嘱託社員は直雇用。それに対して派遣社員は派遣会社から派遣されているので、勤務先に雇用されている訳ではないんですよね。この点が派遣社員と嘱託社員の違いでしょう。
嘱託とパートの違い
嘱託社員には非常勤で短時間勤務の人もいます。そういう意味では、パートと嘱託社員は、呼び名が違うだけで似ていると言えるでしょう。ただ、パートも嘱託社員のいずれも、必ずしも非常勤で短時間勤務とも限りません。その企業が嘱託社員やパートとどのような雇用契約を結ぶかによって変わります。
嘱託社員として働くメリット・デメリット
嘱託社員として労働者が働くメリットやデメリットを確認していきたいと思います。
メリット
再雇用で嘱託社員として働く時のメリットを紹介します。
(1)現役時代と同じ企業なので働きやすい
定年退職後に再雇用されて嘱託社員として働くと、現役時代と同じ企業なので働きやすいです。仕事内容ががらっと変わることもないので、現役時代のキャリアを活かすことができます。
(2)正社員ほど責任がないことが多い
再雇用の嘱託社員は正社員ほどの責任がないことが多いです。数十人の部下をマネジメントしてきた大企業の部長も、嘱託社員になれば重圧から解放されがちです。また、責任が軽くなるだけに、現役時代には取り難かった年次有給休暇も、嘱託社員であれば取りやすくなります。
(3)企業によっては良い処遇で責任を持つ仕事に就ける
前項と矛盾するようですが、企業によっては嘱託社員を戦力と考えています。そういった企業においては、退職後の嘱託社員に対して、正社員ほどではなくても良い処遇をし、その代わり責任のある仕事をさせます。嘱託なのにマネジメントができることも、企業の考え方次第であり得ることです。
デメリット
次に嘱託社員として働く時のデメリットを紹介します。
(1)契約が更新されないことがある
嘱託社員は非正規雇用です。そのため、正社員のように定年まで雇用が保障されている訳ではありません。社会保険などの福利厚生はあるものの、契約が更新されないことにはメリットを享受しきれませんよね。ただ、再雇用後に嘱託社員は、65歳まで雇用されることが義務づけられていますので、企業の勝手な判断で契約を更新できないようにしています。
(2)正社員よりも待遇が悪くなる
再雇用で嘱託社員として働く場合、現役時代と同じ年収が保障されるケースは多くありません。企業は希望する労働者は概ね65歳まで雇用しなければならないので、長期的には人件費がかさみます。そのため、再雇用後の嘱託社員に対しては、現役時代の60~70%などの待遇で処遇することがあり得ます。
企業が嘱託社員を雇用するメリット・デメリット
今度は嘱託社員を雇用する企業側の視点に立ったメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
再雇用後の嘱託社員のメリットです。
(1)ベテラン社員の知見・経験を活用できる
再雇用後の嘱託社員は豊富な知見・経験を有しています。ですから、企業に留まってもらえれば引き続き働いてもらったり、後進の育成に力を注いでもらったりすることができます。
(2)人件費を削減できる
嘱託社員は、一般的に正社員の人件費より低く抑えることができます。そのため、知見・経験があるベテラン社員を、低い人件費で雇うことができる訳です。嘱託社員の能力が高ければ高いほど企業にとってはメリットがあるでしょう。
デメリット
次に企業が嘱託社員を雇用するデメリットを紹介します。
(1)嘱託社員が働くモチベーションを保つことが難しい
嘱託社員は正社員に比べて年収が低いですが、その分、責任が重い仕事を任されないことが多いです。責任が重い仕事を任されないことで、現役時代よりも嘱託社員の仕事のモチベーションが低下する懸念があります。モチベーションが下がり過ぎると、仕事が残っているのに「嘱託社員だから」と残業を嫌がることにも繋がります。
(2)辞職のリスクを抱える
再雇用後の嘱託社員は子どもが巣立ち、家のローンが終わるなど、生活にゆとりができていることが考えられます。そのため、「無理に働かなくても良い」と思う嘱託社員も出てきます。つまり企業は、嘱託社員にいつ辞められるか分からない、辞職のリスクを抱えることになるんですね。嘱託社員が全て軽い仕事を担っている訳ではありませんから、重要な任務があるのにすぐに辞められると企業としては困ってしまいます。豊かな知見と経験を持った嘱託社員の代用が難しいこともありますので、企業は辞めさせない対策を講じる必要があります。
嘱託社員の給与
嘱託社員の給与はどのくらいもらえるのでしょうか?ボーナスはもらえるのでしょうか?賃金面について解説していきましょう。
給与体系や平均給与などについて
企業が嘱託社員を雇用するメリットに人件費削減があることから分かるように、嘱託社員の給与は、現役時代よりもカットされます。一般には月額の給与は現役時代の6~7割になることが多いですね。企業によっては、退職直前の人事評価を加味して、嘱託社員の給与の割合を決めることがあります。法律で65歳まで雇用しなければならないからといって、無能な社員を高い給与で雇う必要はない訳です。
嘱託社員の平均給与は、賃金構造基本統計調査(平成30年)によると209.4千円でした。正社員の平均給与は323.9千円なので、正社員の65%程度ということです。
ボーナスはもらえる?
嘱託社員のボーナス支給は、企業によってまちまちです。嘱託社員だからといって不支給とする訳ではなく、定額を支給されることがあり得ます。雇用契約書にボーナス支給の可否や金額について明記されています。
嘱託社員として働く際の注意点
最後に、嘱託社員として働く際の注意点を確認していきましょう。
社会保険について
嘱託社員の社会保険については、一定の雇用期間や労働条件を満たせば加入することができます。
年金について
嘱託社員の年金はどうなっているでしょうか?年金は段階的に支給年齢が引き上げられ、最終的には65歳まで引き上げられることになります。年金を支給される嘱託社員は、月の年金額+給与+賞与(12分の1)=280,000を超えると、年金額が減額されて支給されることになります。
残業代について
嘱託社員が管理監督者でない限り、残業代は支給されます。現役時代と同じ割増賃金が支給されます。
有給について
嘱託社員でも正社員同様に労働条件を満たせば、有給休暇は発生します。週の所定労働日数4日以上および所定労働時間が30時間を超えれば、正社員並みの有給が発生します。
解雇の可能性は?
嘱託社員は有期契約ですので契約期間中は正社員よりも解雇しづらいです。ただし、絶対に解雇されない訳ではありません。会社が倒産するほどの経営危機に陥っていれば、嘱託社員の解雇もやむをえません。
まとめ
嘱託社員は非正規雇用の1つ。再雇用後の労働者が多いです。人生100年の時代と言われています。現役時代の能力を活かして企業も嘱託社員もWin-Winの関係を築けることを目指したいですね。